月華SPA（つきかスパ）

[一条 りょうの棲む世界]
ここは新しい世界であり、かつて存在した世界に通じる背後の扉は既に閉じられております。
この予告もなにもない状況にアナタの心臓は烈しく音をたてはじめ、その音はある種の決意を持って静かな部屋にしっかりと響き渡ります。
誰よりもまずご自身がその音の大きさに驚かれることでしょう。もちろんその音は彼女の耳にもしっかりと届いております。
暗がりの奥にある彼女のシルエットがわずかに揺らぎ、顔をあげた口元にはうっすらと品のよい微笑みが浮かびあがります。
彼女の優しい微笑みを前に心から安堵するも束の間、突然出し抜けに投げつけられるあまりに強烈な言葉。。
それは日常的に使っている言葉で説明できる種類のものではなく、それらは意識の寄せ波、意識の引き波のようにやってきては文字を残し、すぐにまたやってきては文字を消し去ります。
そこに書かれる意味を波と波の合間にすばやく読み取ろうとするのは簡単なことではございません。
最後まで読み取る前に次の波に洗い流されてしまいます。
そのきびきびとした言葉は、瞼を打ち、胸を打ち、背中を打ち、足を打ち、尻を打ち、アナタの意識を明確に捉えていきます。
そこにはきっとなにか明らかにされていない理由があり、深い意味があり、そして間違いなく親密なものが含まれます。
そのことを嬉しくお思いなられることでしょう。この世界にあって自分が限りなく公平に扱われているようにお感じなることでしょう。
やがてはすべてを開放していくのでございます。
もうこうなってしまってはただ受け入れるしかございません。
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